トゥールーズ着 バイヨンヌ発
2019年秋にフランスのルピュイからフィジャックまで、サンチャゴコンポステラへの巡礼道を走ったが、今回のルートはほぼその続きで、多くの道では、車どころか人にもめったに出会うことがなく、オーバーツーリズムとは無縁だった。
70代3人、60代1人の男女4人で今回の旅はスタートした。当初は、ニースを中心とした地中海沿いのユーロベロを走る予定だったが、コロナ明けで有名な観光地は多くの人が押し寄せていることを知り、急遽行先を変更した。
航空券(Jal)と最初(トゥールーズ)と最後(バイヨンヌ)のホテルは、旅行会社で手配。一人445,850円(コロナ明けと円安のせいか高い)。航空券のみでは330,000円。Jalは輪行袋入りの自転車を載せてくれることが確実にわかっていて、これまでも問題なく運んでもらっていたので、運賃は高いがこれにした。そのほかの宿はネットで予約した。
使った地図と資料
1.地図;MICHLIN 20万分の1 524 ‘Aquitaine’
2.地図;MICHLIN 20万分の1 525 ‘Midi-Pyrénées’
3.地図;MICHLIN 15万分の1 336 ‘Gers Lot-et-Garonne’(自転車にはこの縮尺の方がいい)
4.ガイドブック;Miam Miam Dodo Le Gude Secton2 Cahors/Roncevaux (歩き巡礼用のガイドブック。カオールの案内所で購入18€)
5.ガイドブック;The Way of St James A cyclists’ Gaide by John Higginston(ルピュイからサンチャゴコンポステラまで自転車で走った記録。コンパクトで詳細で、手に入れば非常に役に立つ本 19.95㌦)
6/5(月) 東京 ―空路― トゥールーズToulouse泊
出発時に羽田でWiFiを借りる。13日間20,800円
自転車は、羽田までクロネコ(パッキングの仕方に注意)や家族の車で運んでもらった。
JAL 045便 羽田HND 08:25発 シャルルドゴールCDG 16:15着
JAL 5345便 シャルルドゴール 18:30発 トゥールーズTLS 19:50着
輪行袋入りの自転車は、重さサイズともクリアー(Jalは、23kg/個×2個、輪行袋の3辺の和203cm以内)し、追加料金なく預かってもらえた。
カナダ、グリーンランドの上空を飛ぶ。窓からは、息をのむような氷の絶景。到着したトゥールーズは、夜の10時近くまで明るい。ホテルまで、2台のタクシーに分かれて乗る。ドライバーはトランクに大きな輪行袋入りの自転車を巧みに入れた。駅前にはibisが2軒並んでいて、予約したホテルは左の安い方だった。中はクラシックな造り。自転車はホテルの部屋で組み立てた。
6/6(火) トゥールーズ ―輪行― カオールCahors泊
この日は走行なし 電車でカオールまで移動して終日カオール観光
トゥールーズ発 カオール着
9:01 → 10:31
電車の時刻は、事前にネットのフランス版乗り換え案内で調べておいた。
駅前は、4年前は工事中だったがすっかりきれいになっていた。駅前広場で自転車の試走、問題なし。ラグビーのワールドカップに関係した「Toulouse」の大きな看板の前で記念撮影。
カオールまでの乗車券を買おうと窓口を探したが見当たらず、自動券売機を操作するがうまくいかない。遠距離と近距離で券売機が違うらしく、手伝いのスタッフに助けてもらった。カード払い4人で82.4€。
発車まで時間があったので、前回はマクロン大統領が来るので入れなかったキャピトル広場の市庁舎を見に行ったが、時間が足りず今回も入れず。
自転車を電車にそのまま載せ、短い編成の電車が定刻に発車。車窓はすぐに、丘陵、畑、林、小さな村などの田舎の風景になる。
カオールはロト川(Le Lot)が文字通りの巾着型に蛇行したその袋の中にあり、静かで小さな古い町。前回のルピュイからフィジャックまでのツーリングでは、この川沿いをたどって走った。ロト川は、このあと巡礼道から離れ、幾度も蛇行しながら西へ流れ、ボルドー近くでトゥールーズから流れてくるガロンヌ川と合流し大西洋へそそぐ。
ロト川にかかるヴァラントレ橋(Pont Valentre)は世界遺産で、この上を巡礼道が通る。自転車を引いて渡る(巾着の外に出る)。巾着にそって反時計回りに川沿いを、ワイナリーを右手に見ながら走り、巾着の底にある橋を渡って中へもどる。カオールは黒ワインで有名。ここで使われる黒ブドウのマルベック種のため非常に濃い赤色のワインができる。
レストランの外テーブルで昼食をとっていると、通りをデモ隊がゆったり通る。年金の支給についてだろうか、たくさんの人たちが参加している。
観光案内所でガイドブックと地図を購入。日本人の歩き巡礼熟年夫婦がいて、旦那さんが翻訳機を使って熱心に係りの人に質問をしていた。サンティアゴコンポステラまでは二人にとってかなりの冒険に見えるが、それを実行するなんて素敵な夫婦だ。
サンティティエンヌ大聖堂(Cathedrale St. Etienne de Cahorsや屋内市場を見て、そのあと宿を探した。近づいているはずだが見つからない。自転車を引いて狭い路地をぐるぐる。店番をしていたお姉さんに住所を見せると、親切にも一緒に探してくれ、通りに面したドア脇のボックスに入っている鍵を見つけて、ようやく入ることができた。
アパートは、旧市街によくある、狭い路地に面して隣とぴったりくっついた17、18世紀?の古い、古い、建物。その中をいくつかに分けて改装して貸している。とにかく古くて階段などは薄暗くすり減っている。宿泊費が安く、長期滞在用。
お礼にワインを買ってお姉さんの店までもっていくと、なんとその店ではワインを売っているではないか。私たちは宿を探すのに夢中で、尋ねた人が何屋の人なのか意識の外だったのだ。お互いに笑い合い、彼女はこの店はイタリアの食材屋だから、あるのはイタリア産ワインだと言い、遠慮がちにフランスワインを受け取ってくれた。この店で夕食用のパスタを買った。
2 chambres 88m2 Extra centre historique Cahors vaste appartement convivial et cosy(こんな長い名称のアパート)ダブルベッド2台 ソファーベッド3台 キッチン 洗濯機 冷蔵庫 電子レンジなどあり
住所 76 Rue du Maréchal Joffre, 46000 Cahors, France Tel. +33 6 13 54 73 08
ネットで予約 4人で €78.64(約11,834円)
6/7(水) カオール ― 輪行 ― モアサック― 走行 – サンタントワーヌ泊
カオール – 輪行 – モアサック – 9km – サン=ニコラ=ド=ラ=グラーヴ St.Nicholas de la Grave – 14km – オヴィラールAuvillar(フランスで最も美しい村) – 7km – サンタントワーヌ 合計30㎞走行
カオール Montauban Ville Bourbon モアサック
9:32 → 10:15 10:41 → 11:00
朝出発前に、カオールの東側の高台に広がる旧市街を走ったと言うか自転車を押して登った。公園Place Lafayetteからはロト川が見下ろせて見晴らしがいい。
カオールから乗った電車をモンタルバンMontauban Ville Bourbonで乗り継ぎ、モアサックの駅に着くと、人影はまばらで、静かで日差しが強く暑い。世界遺産サンピエール修道院Saint-Pierre Abbeyはどこだ?多分あれだ。遠くに見える尖塔を目指して走る。
修道院は、ロマネスク美術の傑作と言われるだけあって圧倒された。日本語のパンフレットをもらった。これまで見たロマネスクのどの修道院よりも素晴らしい!だが、午後の休館の時間が迫る。もったいないが足早に見学。たっぷり半日はかけたい所。残念。
昼食の時間になったが、修道院のあたりにはほどよいレストランやパン屋が見当たらない。空腹のまま次の目的地オヴィラールに向かってD813を西へ走る。今日から本格的に巡礼道に沿って自転車で走るのだ。車がスピードを上げて脇を走り抜けていく。
ふと左手を見ると、あまり広くない水路Canal des Deux Mers が道と並行して走っている。その左岸がサイクリングロードになっているというか、これがモアサックからの巡礼道だったのだ。この水路はタルン川Le Tarnやガロンヌ川Le Garonneにぴったり沿って作られている。その水路を渡る小さな橋を見つけ、サイクリングロードに入る。車から逃れられて一安心。D15へ入り、ガロンヌ川を渡る。橋の上からは左前方に、大きく膨らんだガロンヌ川が湖のように見え、遊水地なのだろうか、水の色はミルクコーヒー色。
D67、D12を「たどりフランスで最も美しい村」の一つオヴィラールAuvillarへ。
オヴィラールの村は巡礼道上にあり、モダンな観光案内所、そのそばの展望台からはガロンヌ川が見渡せる。円形の穀物館Halle aux grains d’Auvillar、時計塔Tour de l’Horloge d’Auvillarが見どころ。
お腹がすいていたので見つけたレストランL’Horloge hôtel restaurantに入るも、昼の食事時間は終わり。仕方がないので、アイスクリームを注文。そばの席の夫婦から、6月に日本に仕事で行くが、その時に観光もしたいのでどこがいいかと聞かれたので、東北の温泉を勧めた。目に前にある角の食料品店 VIVALでバナナとクッキーを買い、店の外のごみ箱のそばで立ち食いして昼食とした。
オヴィラールを後にして、今夜の宿のあるサンタントワーヌSaint-Antoineの村へ。ここまであたりはほとんど畑か林で、車も人も見かけなかった。
サンタントワーヌは小さな教会の周りを20軒ほどの家が取り囲む小さな村で、今夜の宿Maison du boisはその中心。巡礼道はこの村の南を通っている。
宿の女主人がてきぱきと対応してくれる。夜はこの宿のレストランでほかの巡礼の人たちと一緒に。メインディッシュはチキン。
この記録をまとめるために地図を見て気付いたが、この日、運河沿いのサイクリングロードをもっと先へ進み、ポムヴィックPommevicで運河から離れ巡礼道に入り、ガロンヌ川を渡れば、楽にオヴィラールに着くことができたのだ。
Maison du bois
ラージ ツインルーム、 デラックス ダブルルーム ダブルベッド2台付 朝食なし
住所 5 Rue de la Commanderie, Saint-Antoine, 32340, フランス
電話 +33650276559 ネットで予約 4人で€146.49(約21,530円)
6/8(木) サンタントワーヌ ― 走行 ― レクトゥールLectoure泊
サンタントワーヌ -6㎞- フラマランFlamarens -3㎞- ミラドゥーMiradoux ―5.5km― カステ=アルイCastet-Arrouy -9㎞- レクトゥール 合計23.5㎞走行
朝食はクロワッサンと手作りのジャムやマーマレードが並ぶ。
出発前にこの小さな村をぐるりと散歩。高台にあるので、城壁からの見晴らしがいい。
実りを迎えた麦畑の丘陵を走ると、道端には赤いひなげし(コクリコ)が咲いている。与謝野晶子は夫鉄幹を追って渡仏し「ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟」と詠んでいる。
つばめが飛び交い、紫の藤の花も咲いている。ひまわり畑、麦畑。麦畑にもいろんな色がある。道端にはブラックベリーの花、どこの町や村に行っても菩提樹の大木があり、クリーム色の花盛り。
サンタントワーヌを後にして、畑の間を通るD953でフラマランへ。この小さな村で巡礼道と交差。ここも人気のない小さな村、崩れかけたフラマラン城、古い教会。巡礼宿のドアのところにリュックが並んでいた。次の宿泊地まで荷物を運ぶサービスがあるのかもしれない。
さらにD953を進むと高台のミラドゥーの村。ここから道はD23になる。まもなくカステ=アルイへ。昨夜の宿のマダムおすすめのこの村のレストランLa Planchaで昼食。このレストランの前を巡礼道が通っているので、次々と巡礼の人がやってくる。お客は、私たちを除いてすべて歩き巡礼の人。
ステーキは、嚙んでも嚙んでも呑み込めない硬い牛肉で、あごが鍛えられる。テーブルの間を行ったり来たりしている犬にこっそり与えた。この犬が太っているわけがわかった。
今夜の宿のあるレクトゥールも高台。町に入る手前で、DIYもある大型スーパー Intermarché SUPER Lectoureに寄って、夕食と朝食の食材を調達。
宿のA2 PASはなかなか見つからない。そのはずで、入り口は旧市街の狭い通りに面した店と店の間の小さなドアで、見逃しそうな小さな表示。ドアを開けてもらうと暗い細長い通路、その先の小さな中庭に光が。木造と石造りとで違うが、京都の町屋に似ている。
昨夜のサンタントワーヌのマダムがここのマダムと知り合いだと言っていたので、そのことを告げると、伝言はないかと聞かれ、ないと答えるとちょっとがっかりした表情。
大聖堂を見学。聖歌隊の椅子、皮で作られたキリストの像が見どころ。入り口でクレデンシャルのスタンプを押してくれている(多分ボランティア)男性がなんと日本語を話す!飯田橋や富士見町と言う地名が出てくる。50年前に東京でフランス語講師をしていたとのこと。日本語は忘れたと言うが、いえいえ、意思疎通はちゃんとできるレベル。
この町はパステルで有名なので聞いてみると、工房へ案内してくれるといい、車でふもとにあるBleu de Lectoure社へ連れて行ってくれた。パステルと言えばパステル画などを思い浮かべるが、実は植物名で、その葉でブルーに染める。染めている作業がカウンターの向こうに見え、紙や布などを様々な濃淡のブルーに染めた製品が売られていた。若い女性職人とスマホの「Google 翻訳」を使って、日本の藍染めの話などをした。
パステル染めもそうだが植物で染めた柔らかな色合いは、ロマネスクの雰囲気とどこか共通するものがあるように思う。ここまで送り迎えしてくれた彼には、急いで買っておいたワインをお礼にさしあげた。
A2 PAS (これがホテル名)
トリプルルーム(シングルベッド3台)とダブルまたはツインルーム(シングルベッド2台) 朝食付き。両方の部屋に 冷蔵庫 簡易キッチン キッチン用品 電子レンジ コーヒーメーカーなどが付く住所 56 rue Nationale, レクトゥール, 32700, フランス 電話 +33670993779 4人で€190(約28,205円)
6/9(金) レクトゥール ―走行― モンレアルドゥジェールMontréal du Gers泊
レクトゥール -13㎞- コッサンCaussens -6㎞― コンドンCondom -7㎞- ラレシングルLarressingle -8㎞- モンレアルドゥジェール
出発して間もなく怪しい空模様。やがて合羽を着るほどの雨になる。D7をたどりコンドンに着くころには雨が上がり日差しが出ていた。びしょ濡れ。ひさびさの大きな町で、アルマニャック(コニャック)の集積の町。カテドラルを見学。
コンドンの西はずれのPony des Carmes橋を渡り、山道を「フランスで最も美しい村」ラレシングルへ。
かなりの下り坂だったので勢いで道の分岐を通り過ぎてしまい、その先で見つけた裏道から村へ入る。
暑くまぶしいほどの晴れになる。小さな村の中に、堀で囲まれたそれまた小さな要塞があり、要塞の中のレストランBistrot Château Larressingleで昼食のカレーを食べながら、ぬれたものを石垣に広げて乾かす。ここでカメラが壊れ、以降スマホで撮影。
今回は、農道と言ってもいいくらいの畑の中の細い道をいくつも通ったが、車もほとんどなく舗装もしてあり、それぞれの道には番号がついていて、小さな分かれ道でも標識がしっかりしているので迷うことはなかった。
なだらかな丘陵と畑。教会の鐘が響く。
今回のツーリングでは、道路にハリネズミ2匹、ノウサギ1匹がひかれていた。ツバメの姿をよく見た。スズメは日本のものより小さい。
モンレアルドゥジェールの入り口で木の外壁の建物群をみる。何だろうと思って通り過ぎると、実はこれが今晩の宿。
ゲートを通って受付へ。広い敷地の中に、2階建ての同じ形の建物が何件も並び、コンドミニアム形式。プールがあり、子どもたちの声でにぎやか。泊まれるレジャー施設だ。
この町は東西に細長く、人気のない町中の道をどんどん進むと広場があり、それに面して教えてもらった小さな食料品店Proxi。ここで、今晩と明日の朝の食材を買う。広場を取り囲む建物は、アーチ状の装飾の回廊を持つのが特徴。
Domaine de Saint Orens – Résidence de vacances – Montréal du Gers
朝食なし ベッドルームが3部屋 キッチン付き
住所: Lieu dit Saint Orens, Montréal, 32250, France
電話: +33 5 62 68 38 93 4人で€155.70(約22,884円)
6/10(土) モンレアルドゥジェール ―走行― ロジュザンLaujuzan泊
モンレアルドゥジェール -13㎞- ブルターニュ=ダルマニャックBretagne-d’Armagnac -1.5㎞- オーズEauze -8.5㎞- レアンRéans – 3km- カンパーニュ=ダルマニャックCampagne-d’Armagnac – 3km -アイジューAyzieu – 9km- パンジャPanjas – 2.5km- ロジュザン 合計40.5㎞
部屋のキッチンで作った朝食を食べ、出発。晴れ。D29をたどりブルターニュ=ダルマニャックへ。途中巡礼道とクロスする。オーズはやや大きな町で古い歴史がある。
Musée Archéologique / Le Trésor d’Eauze Archaeological Museum(博物館)に入るが、ローマ時代のコインのコレクションがすごい。ここもローマ帝国の一部だったのだ。ほかの見学者はいなくて静か。受付の若い女性は日本に行ってみたいと言っていた。入場料€6。
観光案内所でアルマニャック(コニャック)の小瓶を購入。オーズは木骨づくりの建物の外壁が特徴の町。
D30をカンパーニュ=ダルマニャックまで走り、そこで左折してD258に入る。しばらくすると小さな人気のないアイジューの村に着き、教会のゲートの中の斜面の木陰でパンを食べていると、奥から教会の奥さんが出てきて、ドアを開けて中を見せてくれた。
宿のあるロジュザンの手前で、あたりにも中にも、人っ子一人いないが何か競技をやるような広場を見つけた。説明板によると、肉屋が牛の質を調べるために通りに牛を走らせたことが起源らしい。コース ランデーズCourse Landaiseと言い、中世からのこの地方固有の文化。若者たちが技術と勇敢さを競うために牛を疾走させそれに同行するもので、繰り返し禁止されてきたが、19世紀初頭、レース広場が誕生し、最近フランスの物質文化遺産に登録された。現在使われている牛は、地元の古い品種ではなく、スペイン原産の牛とのこと。
このことは説明板に書かれていて、スマホに入れておいた「Google翻訳」のアプリで写真を撮影して、その場で翻訳。世の中は驚くほど早く便利になって行っている。現在地もローカルな道も簡単にわかり、航空写真を見れば道幅、路面状況、交通量がわかる。どんな言語の会話も、お互いスマホを見せ合うことでスムースに進む。あと残る課題は電話での会話だろうか。この様なツーリングを始めた10年前とは隔世の感がある。
予約しておいた今夜の宿は、巡礼道から少し離れている。それは、やはり人っ子一人見当たらないロジュザンという小さな村の、さらに林の中のわき道を入ったところにあった
宿泊者は私たちだけ。夫婦二人だけでやっていて、建物も中も広大な庭もそこからの眺めも、すべてが美しくまたかわいらしく、まるで絵本の中にいるようだった。二人はここを買い取り、長い時間をかけて手を入れ、自分たちの夢を実現したとのこと。飼われている3羽のにわとり、黒猫、犬もまた、この夢の重要なピースだ。目に入る何もかもがぴったりおさまっていて、これはもう完璧としか言いようがない。
この宿は、夕食も朝食も付いていない。夕食がないなら、宿の近くにレストランがあるはずと思い、食べるものを何も用意してこなかった。近くにレストランはないかと聞くと、ノガロNogaro、エスタン Estang、オーズ Eauzeなどの地名があがるが、車の人はともかく私たちの自転車では半日かけて走る距離にある。「酒屋へ三里 豆腐屋へ二里」と言う言葉があるが、辺鄙さこそがここのよさなのだ。奥さんが出かけるついでに、ピザを買ってきてくれることになった。月は半月で、夜は9時を過ぎても明るい。
朝食は特別に奥さんが用意してくれた。手作りジャムとマーマレードとクロワッサンとカフェオレ。これも雑誌に載っている写真のようで完ぺき。
Domaine Pierrot (ドメーヌ ピエロ)
Doubleルームにに3人、 Doubleルームに1人 キッチンなし 朝食なし
住所 190 route Louis Joseph Cantau lieu dit Pierrot, Laujuzan, 32110, France 電話 +33663560585 4人で€192,79(約28,787円)
6/11(日) ロジュザン ― 走行 ― ジョーヌGeaune泊
ロジュザン – 2.7km – モルメスMormès – 3km – ル・ウガLe Houga – 1.5km – ラ・イテールLa Hitere – 9.5㎞ – エール=シュル=ラドゥールAire-sur-L’Adour– 13㎞ -ジョーヌ 合計29.5㎞
ロジュザンからD244をたどるとすぐにモルメスの村。通りに面したお宅に巨大サボテン、おばさんが出てきて少し話す。そこからD32でル・ウガへ。村の中を通る道が、クランク状の古い町で、教会はお城のようだ。
アップダウンの繰り返し、畑は、麦、一見トウモロコシに見える牛の飼料、ひまわりなど。プラタナスの並木の日陰、道路際の野の花が美しく、ここでも満開の花をつけた菩提樹の大木。
アドゥール橋を渡って11時前に、ややにぎやかな町エール=シュル=ラドゥールに入り、アドゥール川L’Adour岸の公園で休む。釣り人、カエルの声、ゆったりと流れる土色の水。今回フランスで見た大きな川の水はすべてこの色をしていた。巡礼道はこの橋を通っている。案内所が近くにあるが、日曜なので閉まっている。
旧市街の中心にある12世紀のAire Cathedralは日曜礼拝中で、パイプオルガンと讃美歌が中から聞こえてきた。出口の上を見上げると小ぶりのパイプオルガンが見えた。顔を出したオルガニストの男性と目が合い、あがってこいと手招きされた。入り口脇の、時間が止まったような石造りの体一つほどの幅のらせん階段を上るとすぐに演奏席が見え、そばまで行って聞かせてもらった。この男性は、バミューダパンツのラフな格好で演奏していたのがちょっと驚き。
通りすがりの人がお菓子の袋を持っていて、すぐそばの菓子屋Pâtisserie Daugéを勧められ、その人が持っていたものと同じ松の実の焼き菓子を買う。
その後、住宅地のものすごく急な坂を、自転車を押して上り、標高150mの山の上の大聖堂Basilique Ste-Quitterie du masへ。あたりにも中にも人が全くいない。ガイドブックに書かれていた見どころの4世紀の石棺は、手前の柵に鍵がかかっていて近づけずよく見えなかった。
D2で、高速道路をくぐり、今晩の宿のあるジョーヌへ。ところが日曜なので店がすべて休みで、レストランどころか水すら買えない。広場の泉の水が飲めないかと近くにいたおじいさんに聞くと、広場に面した自宅から冷たいレモンジュースを持ってきてごちそうしてくれた。そのあと、彼は中古の自転車屋、骨とう品店、メデュヴァル庭園、教会などを案内してくれた。
教会の前庭には、左右の生きた木の枝が上でつながってできたパーゴラがあったが、なぜあんな風に木の枝どうしがつながるのか不思議だ。
4時近くにチェックイン。宿のマダム、カルメンさんが、何度か、庭のプールに入らないかと言う。そういえば、自転車で走っていると、豪邸でもない普通の家にプールがあるのを見てきた。ここが海から遠い場所だからか、それとも暑いところなのか、それともみんな裕福なのか。
マダムから、夜にコース ランデーズがあるので行かないかと誘われた。残念だが、暗い中、自転車では行けないのであきらめる。今夜の客は私たちだけ。
夕食は、お取り寄せのバルサミコソースのキウイのサラダ、プレートは鴨と砂肝のロットコンフィを、マダムと一緒にテーブルを囲んでお話ししながらいただく。ここでも「Google 翻訳」が活躍。その後、客間に移動してオーズで買ったアルマニャックをマダムと一緒に飲みおしゃべり。この旅で最初で最後の優雅な食事だった。
夜、なんと雷雨と雹が降り、一時停電!コース ランデーズはあったのだろうか。
L’ESTANQUET DE LA BASTIDE
3 Double Rooms 朝食付き 住所 18 Rue Gourgues, Geaune, 40320, France
電話: +33661565600 現地払い 4人で €338.65(約50,097円)
ジョーヌ - 3㎞ ― クレードClèdes ―7㎞- パンボPimbo - 6㎞-アルザック=アラジーゲ Arzacq-Arraziguet ―1.5㎞- ヴィーニュVignes ―7㎞-フィシュ= リュマユー Fichous-Riumayou ―2㎞- ラルール Larreule ―2.5㎞-ユザン Uzan ―5㎞- ブムールBoumourt ―1㎞- アルノ 合計35㎞
この日は、小さな村々をたどる畑の道。ジョーヌを出発して、D111を走りすぐにクレードへ着く。左右が麦畑の道を走り、次の村のパンボでは巡礼道とクロスする。この村には、鐘が2つ付いている古いロマネスクの教会がある。
パンボからD32を走り、アルザック=アラジーゲへ。ここはやや大きめの町で、スーパーCarrefourcontactで、昼食のサンドイッチと今夜と明朝の食材を買う。これまでの宿には石鹸がないことが多かったので、スーパーのとなりにある薬局で1個買った。
広場でサンドイッチの昼食。
D111でヴィーニュを経由してフィシュ= リュマユーへ。ここから道はD278になるが、歩き巡礼道がラルールまで重なり、巡礼の歩く後ろ姿を見かけた。さらに巡礼道のD49でユザンに行く。ユザンには端正な尖塔の教会があり、ここでも巡礼の姿を見かけた。
これ以上巡礼道をたどることはやめ、アルノへ。宿はサーキット場のある山の上にあり、近づくとエンジンの音が聞こえてきた。
シンプルな造りの宿で、前庭からピレネーが見えた。サンジャンピエドポーに近づいている実感がわく。ほかに客はなく1軒まるごと貸し切り状態。マダムが対応。日本人の巡礼が10人泊まったことがあると言っていた。
Git chez BOUBET 1
2 Bedrooms 素泊まり キッチン、洗濯機付き 3室
所在地: 11 Camin deu circuit Arnos, フランス 64370 電話:+33661036892 4人で€74.96(11.355円)
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6/13(火) アルノ ― バイヨンヌBayonne泊
アルノ -30㎞- ポー Pau ― 輪行― バイヨン 走行距離30㎞
当初の予定:アルノ ― アルティクスArtix ― 輪行 ― バイヨンヌ
電車の駅のあるアルティクスまで10kmほど走って、そのあとバイヨンヌまで輪行の予定だったが、出発前、日本でネットを見ると6月5日から7月14日まで線路工事あり、昼間は電車が走っていない可能性あり。アルティクスは宿から近いが、無人駅だとすると運行の情報が得られないので、バイヨンヌとは逆方向になるが、大きな駅のあるポーまで走ることにした。
曇天の中を出発。気の抜けない朝の交通量の多いD945を走るうちに小雨となり、雨具を着る。ポーに近くなると左手に空港が見えてきて、雨はいつのまにか上がっていた。
ポーはこれまでたどってきた町や村と違い、幹線道路や高速道路が集まってきている大都会で、駅に向かって走っても、走っても、どこまでも、どこにでもある新市街地の風景が続く。ようやく緑が多くなり、右手に深くて水量が多く流れが怖いほど速い泥水色のポー川が見え、それを渡ると駅前広場。駅の案内所で聞くと15:57発のバイヨンヌ行きがあるとのこと。それまで、ポーの町の観光をすることにした。
予定外なのでどんなところなのか全くわからない。日本に帰ってから調べると、ポーは南フランス有数の観光地だった。
駅前のクラシックでかわいらしいケーブルカーLe funiclaire(1908年から)が台地の上まで往復している。無料。自転車も車いすもベビーカーも持ち込み可。もちろんそれを載せる専用のスペースがある。あっという間に到着。
登りきると旧市街の白く美しい建物群と広い通りが目の前に現れ、圧倒された。案内所で地図をもらい見学開始。
ボーモン城は、フランス革命のルイ14世のおじいちゃんであるアンリ4世が生まれた城。見学はガイドツアーのみで、時間が折り合わないので中に入るのはあきらめたが、幾何学庭園は美しい。近くにあるサンマルタン教会も大きくて立派。
昼食は、2時を過ぎるとレストランはみな閉まってしまうので、しかたがなくケンタッキーに入った。
その後、眺めのいいピレネー通りを走り、豪華なボーモン宮Le Palais Beaumont(1900年に建てられた冬の宮殿で現在はコングレスセンター)を左に見てボーモン公園Parc Beaumontへ。
駅へ戻るが、案内所の説明とは違って17:08までないらしい。しかし、間近になってもホームの案内板が切り変わらない。もしかしたら代行バスかもしれないと、急いで駅前の橋を渡った並木道にバスが何台か止まっていて電車の発車時間が過ぎていたが、まだ運転手がトランクに荷物を積み込んでいたので、自転車を裸のままトランクに入れてもらって、あわてて乗る。すでに満席。
綱渡り状態だが、ここで気を抜いてはいけない。
電車なら2時間ちょっとでバイヨンヌに着くので、それに合わせるためにバスは高速道路に入るのかと思ったら、そうではなかった。下道をくねくねと、私たちが自転車で走ったようなDのつく番号二桁の道をたどる。
無人の駅にもそれぞれ立ち寄り、小さなロータリーを大型バスがまわる。もちろん、下りる人がいる。運転はうまい。
気が付くと右手にあったポー川は名前が変わり、大河のようなアドゥール川Adourになっていた。運転手は何を思ったのか、バスを土手の上を走らせている。土手と言っても日本のように高く盛り上げてあるわけではなく、水面とほとんど同じで、ちょっと右にハンドルを切ればアシの生える湿地にタイヤがはまりそうになる。川の水量は多く、茶色く濁っている。車内は静かでしゃべる人はいない。私たちと同じ気持ちなのだろう。土手道なので、当然橋の下に差し掛かる。バスの屋根が橋げたにぶつかりそう。やっぱり。やむなくバックする。水際の柔らかい道を大型バスがバックするのもそれはそれで怖い。運転手はあきらめたのか普通のローカルな道に戻った。旅にはいろんなことがある。
バイヨンヌの駅に着いたのは21時を過ぎていたが、まだあたりは明るい。雨がぱらつく。
手配会社カルメンの事務所の外にあるボックスから、暗証番号を入れて鍵をゲット。宿を探して旧市街の中を走る。近所の人に手伝ってもらってようやく見つけた古い建物には、玄関ドアとは思えない古くてすり減ったドアが。鍵穴もすり減っていて、隅っこについていているので、鍵を差し込むと手が右の壁に当たってしまう。うーん。日本だったらとっくにドアごと新しくしているところだ。
中はウナギの寝床状で、細長い通路が奥に延び、突き当りには裏の路地へ出るドアがあった。映画に出てくるような狭い暗い古い、手すりがぐらぐらしていそうな階段、各階に貸間が2つ。3階にある部屋に入ると建物はぼろぼろなのに、流し台やオーブンなどのキッチンセットはおしゃれで最新のものが入っていて、立派で大きなオーブンが2台、IHヒーター、手をかざせばふたが開くごみ箱。
住宅街のせいもあるが、レストランも店もこの時間は開いていなく、こんなに時間がかかると思っていなかったので、食べ物を用意していなかった。腹ペコ。
しかし、朝から今日は何と言う日だったのだろう。
Appartement Bayonne, 3 pièces, 6 personnes – FR-1-239-709
朝食なし キッチン 冷蔵庫 電子レンジ 洗濯機付 住所 20 Boulevard rempart lachepaillet, 64100 バイヨンヌ, フランス
電話:+33559010107 2泊4人で €320(約47,584円)
6/14(水) バイヨンヌ連泊
バイヨンヌは、アドゥール川Adourとニーヴ川La Niveが合流したところに発展した街で、旧市街は、ニーヴ川を挟んでグランバイヨンヌとプティバイヨンヌに分かれる。宿はグランバイヨンヌの方の3重の要塞の壁に囲まれたその壁に近いところにある。見おろすと下は緑の公園になっている。
サントマリー大聖堂は堂々として、2本の尖塔は町から遠く離れたところからも見える。回廊は入り口がわかりづらいが素晴らしい。「バスクとバイヨンヌの歴史博物館」をじっくり見学。
バイヨンヌは、スペインから初めてフランスにチョコレートがもたらされた町で、たくさんの専門店がある。
15日はサンジャンピエドポーに行く予定だったので、ダイヤの確認をしに駅に行くと、本数が少なく、しかも自転車は電車に載せられないと言われたので、明日は、近くのサイクリングロードを走ることにした。
シャワーを浴び終わると、どこからか太鼓の音が聞こえてきた。サンダルを履いて音を頼りに下の公園に行くと、地元の人たちが、太鼓の練習をしていた。撮影しているとおいでと言われ近づくと、あっという間に太鼓の紐を腰に巻き付けられて、練習に参加させられた。ちょっとややこしいたたき方のところに来ると、小学生ぐらいの少年がちらりとこっちを見る。きっと間違えてないかこちらに気を遣ってくれていたのだ。
6/15(木) バイヨンヌ連泊
終日、アドゥール川沿いにビアリッツまでサイクリングと旧市街観光
最初、今夜泊まるホテルHotel Loreakに行き、荷物を預けて出発。途中の道端のパン屋で焼き立てパンを買う。おいしい!
サイクリングロードは、アドゥール川の左岸を大西洋の方に向かい、そこから海沿いにアンダイエHendayeまで続いていて、きちんと整備されていた。アドゥール川は干満の差が大きい川。サイクリングロード沿いに小さな地魚の屋台があり、クロダイの仲間 イシモチ マス? カワハギ 中くらいのタイ、名前のわからない魚など並ぶが、種類は多くない。
松林のなかにリゾート風の別荘が立ち並び、ちょっと湘南に似ているかも。駅のある町ビアリッツBiarritzまで走った。ビーチ、カジノ、聖母の岩、ナポレオン3世の妃の別荘(今は高級ホテル)など、ここは高級リゾート地。公衆トイレがユニークで、終わってボタンを押すと便器だけでなく床まで水が勢いよく流れる。
レストランの屋外席で昼食。レモネード、イカ、バスクバーガーなど。肉がおいしい。
帰りは、閑静な住宅街の中を通るマルヌ通り、ビアリッツ通りをアングレットAngletまで走り、そこから交通量の多いD810でバイヨンヌまで戻ると、昨日の太鼓の練習があった公園の脇に出た。
夕食はホテルのレストランで、ステーキ イカ ビッグサラダなど。肉はやはり硬い。明朝は早い。空港までのタクシーの予約をした。
Hotel Loreak(3つ星ホテル) 旅行社で予約
1泊1室(3人部屋)朝食無し 30,000円(10,000円×3名)
Double Room 1泊1室(1人部屋)朝食無し 18,000円×1名
6/16(金) 帰国
16JUN AF7485 BIQ CDG 0710 0845 16JUN
16JUN JL 046 CDG HND 1900 1545 17JUN(羽田には17日着)
朝5時にタクシー2台、チップを含めて€50。輪行袋は、オーバーサイズだったので取扱い口を探して、空港内を右往左往。重さだけで、サイズの測定はなかった。